192ヵ国で活動をしている赤十字社ですが、初めから広範囲で活動していたわけではありません。
たった1人のビジネスマンから、活動が広がっていきました。
始まりは1859年、黒船がやってきて日本の長い江戸時代が終わった年です。
その頃、ヨーロッパではスイス人のビジネスマン、アンリー・デュナンが商用のためイタリアへ馬車で向かっていました。
イタリアのソルフェリーノという丘までくると、そこからデュナンは一歩も動けなくなります。
2日前まで、ソルフェリーノでは戦争が起こっていたからです。
イタリア・フランス同盟軍、オーストラリア軍、合わせて約30万人が戦い、傷つき、動けなくなった兵士たちがそのまま放置されていました。
デュナンは目の前で苦しむ兵士たちを放っておけず、近隣の町の人々と協力して救護所を作ります。
国籍にかかわらずできる限り手当したのが、国際赤十字の始まりです。
スイスに帰ったデュナンは、戦争は止められなくてもせめて傷ついた兵士たちを手当できるよう、ヨーロッパ全体でルールを作ろうと思い立ちます。
デュナンはソルフェリーノでの悲劇を、1冊の本にしたためました。
本は瞬く間に10ヵ国語に翻訳され、ヨーロッパ中から熱い支持者が集まり委員会を組織したのです。
デュナンはヨーロッパ中を旅し、国王や大臣に会って国際会議への参加を呼びかけ、16ヵ国の代表がジュネーブに集まり国際赤十字が誕生しました。
ソルフェリーノの戦いから、約4年後の1864年のことです。